歯は再生しない組織です  
 
    治るとはどういうこと?
 
いくつか例を挙げて考えてみましょう。
①風邪をひいた → 薬を飲んで栄養をとって寝た → 治った
②転んで、すりむいた→ 汚れを洗って清潔にした → 治った
 
これはどちらも「治った」と言えるでしょう。ではこれはどうでしょうか。
③虫歯になった → 歯医者で削って詰めた → 治った?
 
 私が言うのもなんですが(笑)、本当に治ったのでしょうか?
 
 歯医者が虫歯を削るのは感染した部分を取り除くためです。むし歯は自然治癒しませんので、それにより感染の拡大は防げます。そして歯としての機能を回復するために人工物(金属やCR)をそこに詰めたり、接着したりするのです。ここで大切なことが「機能の回復」です。一番大切なことは、歯の形態が崩れたり失われたことにより、少なからず機能が低下てしまうので、その機能を回復するために歯の形態を回復する事なのです。
 
 歯は免疫や修復機構がもともと備わっていない部分があります。風邪を治してくれたのは何ですか?傷を治してくれたのは誰ですか?というと、それは薬でもなければ消毒薬でもありません(消毒がいいかどうかという議論もありますがそれは置いといてください)。病気を治してくれたのは自分の免疫機構や修復機構です。結局は自分の身体が本来持っている能力で治ったのです。しかし歯にはその機構がない部分があります。また、元来その機構が備わっているものの、感染の結果破壊され、この機構が失われてしまう部分もあります。これらが歯が「治らない」器官と言われる所以です。逆にここに、一生涯自分の歯でしっかり食事をしたいという目標を達成するヒントがあります。
 
    歯の機能とは?
 
 では「歯の機能」とは何でしょうか。歯は咀嚼のための器官です。他にも発音、見た目の維持など他の機能もあります。
 
 咀嚼は「物理的消化」とも言われ、嚥下した後に続く化学的消化の前段階として大変大切な機能です。咀嚼のために咀嚼運動は歯、神経、筋肉が関わるとても高度にコントロールされた運動です。
 
 
 
 
    歯の機能回復
 
 壊れたり、失われた歯を人工器官として作り治し、目には見えない咀嚼という「機能」を回復し、取り戻すのが我々の仕事です。そのためには「咀嚼」という機能をしっかり見ないといけません。しかし見ようと思っても見えるものではありません。ですからそのための「検査」が必要になってくるのです。見えないものを見えるようにし、しっかり原因を見極めて治療をし、治療後にその結果がどうなったのかを評価する事が我々は大切だと考えております。